川屋は紙漉き工程のうち、ちりとりをする場所です。
楮繊維から不純物を取り除くこの作業は、本美濃紙作りではもっとも重要な工程の一つです。本美濃紙は、その滑らかで独特の美しさで有名なため、汚れや傷んだ繊維を取り除く「塵取り」は非常に綿密な作業となります。和紙の繊維を籠やふるいに入れて流水で洗い、自然光を十分に当てながら手作業で選別していきます。

 美濃の和紙工房の多くは、この工程のためにきれいな水が流れる流し台を備えています。しかし、明治時代(1868~1912年)までは、美濃地方には千軒以上の和紙工房が存在し、塵取りのための大きな設備が必要でした。当時、紙漉き職人たちは、湧き水のある水源(川屋)に簡易屋根を設けて、これを共有していました。勘兵衛さんの川屋は、その管理を行っていた当主が代々勘兵衛という名前を名乗っていたことから、いつのまにかそう呼ばれるようになったと言われています。

 この川屋は、美濃に残っている川屋の中でも最大のもので、両端が開放されたシンプルな構造となっておいり、木材で支えられた屋根にはトタン板が用いられ、片側には窓を設けて十分な自然光が取り込めるようになっています。
 長さ13メートル、幅50センチほどの石造りの水路に湧き水が絶え間なく流れるこの作業場には、最盛期に最大30人もの職人たちが並んで何時間も水の上にかがんで作業をしていたということです。
 現在は、塵取りには用いられなくなったものの、和紙作りにおけるきれいな水の大切さや、共同作業という側面を伝えるために市の有形民俗文化財として指定・保存されています。
 現地の人々は、今では、野菜を洗うときなどにこの川屋を利用しています。

 

01-82勘兵衛さんの川屋 (JPG 510KB)

勘兵衛さんの川や (JPG 789KB)

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